第十五回 クロマチン代謝のシステマチックスクリーニング

谷内江@トロント大です。

現在守屋さん、吉田さん、大西さんらとYeast Meeting 2012@プリンストンに滞在しています。5泊6日でプリンストン大学に缶詰で濃い日々を過ごしています。

酵母テクノロジー屋の観点から、昨日のFred van Leeuwenさんの発表 [1] が面白いスクリーニングだと思ったので紹介させて下さい。

正確に発表を覚えていない部分があるかもしれませんが、概要はこうです。
彼らはまずヒストンタンパク質をエンコードする遺伝子の上流(もしくは下流)に二種類の免疫沈降タグとloxPサイトと共に以下の具合に入れました。
たぶんこんな感じでした:

[ヒストンH3]-[loxP]-[免疫沈降タグA]-[ターミネーター]-[loxP]-[免疫沈降タグB]

ヒストンH3をエンコードする遺伝子をこのようにしておくと、普段は[免疫沈降タグA]でしかヒストンを落とすことができませんが、Cre-loxP反応後は[免疫沈降タグB]でしか落とせなくなります。

Cre-loxPの誘導がない状態では、細胞内の染色体はすべて[ヒストンH3]-[免疫沈降タグA]で形成されています。
しかし、ある時間に細胞に対してCre-loxPの誘導をかけると染色体のヒストンH3の代謝によって染色体が[ヒストンH3]-[免疫沈降タグB]で形成されはじめます。

したがってCre-loxP反応後ある時間後に[免疫沈降タグA]で落ちてくるヒストンH3の量と[免疫沈降タグB]で落ちてくるヒストンH3の量をみることでクロマチンの代謝具合をモニターすることができるというものです。

これだけでも面白いのですが、彼らはさらにこれをBar-Seq法と組み合わせました:

酵母の一遺伝子破壊株コレクションの株それぞれにバーコーダー法 [2] でDNAバーコードを入れ、このクロマチン代謝トリック株とそれぞれ掛け合わせ、SGA法 [3] でクロマチン代謝トリックを持ちかつ一遺伝子が破壊された株のコレクションを作成しました。

すべての株をプール化して、Cre-loxPを誘導し、ある時間後に[免疫沈降タグA]でのChIP-Seqと[免疫沈降タグB]でのChIP-Seqをやって、[ヒストンH3]-[免疫沈降タグA]と一緒に落ちてきたDNAバーコードの数と[ヒストンH3]-[免疫沈降タグB]と一緒に落ちてきたDNAバーコードの数を比較しました。

要はこれで一遺伝子破壊に対応したクロマチン代謝の速度が一斉に測れるというもくろみで、アイディアはとても賢いのですが、まだまだ壁もあるようでした。

一遺伝子破壊株につきUPTAG-KanMX4-DNTAGという二つのバーコードが入っているのですが、UPTAGの結果とDNTAGの結果は相関しているのかという私の質問には「ない。KanMX4のプロモーター領域(UPTAG周辺)とターミネーター領域(DNTAG)周辺ではヌクレオソームのコンポジションが違う。」というフニャフニャした答えが返ってきました。

昨夜は日本人酵母研究者で集まって酵母の未来を語り合いました。

私は明日の朝にバーコードを使った次世代のインタラクトームスクリーニングについて発表します。

[1] http://www.yeast-meet.org/2012/abstracts/fulltext/f12560021.htm
[2] http://www.nature.com/nmeth/journal/v5/n8/full/nmeth.1231.html
[3] http://www.utoronto.ca/boonelab/sga_technology/index.shtml

投稿日: 2012年8月4日 | カテゴリー: 遺伝子工学 | パーマリンク 4件のコメント.

  1. これ、面白い試みだとは思いました。こういうグローバルスクリーニングでは、「新しい因子」がとれる可能性をどれぐらいアセスしてやるんでしょうね。あたらし因子がとれなかったらどう落としどころを見つけるのか。グローバル解析についての次のエントリーでも考えてみたいです。

  2. 谷内江さん、みなさん

    暑中お見舞い申し上げます。
    (どのくらい暑いのでしょうか?)

    私はちょうど大学の試験期間で試験をしたり採点したりと、皆さんの知的活動をとても羨ましく日本より眺めております。

    谷内江さん、興味深い発表のレポートをありがとうございます。

    質問ですが、上記の「クロマチン(ヒストンH3)の代謝」とは具体的に何を反映しているものですか? クロマチンがCreによって組換えが起こるスピードのことでしょうか。

    PCRで組換えは確認できると思いますが、それをウエスタン検出に置き換えたと理解してよろしいのでしょうか? PCRの方が簡便のようにも思えるので、いまいちそのメリットがよく分かりません。

  3. 谷内江@トロントです。

    わかりにくくてすみません。

    ゲノムには

    [ヒストンH3]-[loxP]-[免疫沈降タグA]-[ターミネーター]-[loxP]-[免疫沈降タグB]

    がエンコードされています。

    Cre反応前はヒストンは
    [ヒストンH3]-[免疫沈降タグA]
    という形になります。一方でCre反応後は新しく作られるヒストンは
    [ヒストンH3]-[免疫沈降タグB]
    とうう形になります。

    従って、Cre反応後任意の時間後に、タグAで釣れてくる染色体内のヒストンとタグBで釣れてくる染色体内のヒストンの量を比較すると、染色体内のヒストンの新陳代謝を見る事ができます。

    今回の仕事はこれに一遺伝子欠損やバーコードを組み合わせて、ヒストンの新陳代謝に関わる遺伝子をスクリーニングしようというものでした。

  4. 丑丸敬史

    谷内江さん

    ありがとうございました。
    ある時点(Creでtime 0が設定できる)以後の、ある部位におけるヒストンの置き換わりを調べられるということですね。

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